お前限定


生徒会長、高嶺 泰久には幼なじみが一人いる。
名前は友国 宗幸といい、二人は幼稚園から小学校、中学校、高校と同じ学校に進学し、いまでは生徒会長と対をなす組織、風紀委員長の座に着いていた。

そして、そんな二人は幼なじみという絆だけでなく、甘い関係で結ばれていた。

「会長!高嶺会長。あのっ、僕……」

さっぱりとした短い黒髪に、理知的で穏やかな相貌。とても頼りがいのある逞しい体躯に身長。それでいて威圧感を感じるどころか、どこか親しみ易さを感じさせる柔らかな笑顔で、泰久は声の主を振り返った。

「何かな?」

高嶺生徒会長、その役職が定着して生徒達の間で噂になる日々が続いた明くる日。
同じく風紀委員長として選ばれた友国 宗幸はその有名人を廊下で呼び止めると、その腕を掴み、顎をしゃくって言った。

「ちょっと、顔貸せ。泰久」

生徒会と風紀委員会。
共に肩を並べる組織だが、その人員の選出方法は特殊で、それぞれ異なっていた。生徒会が生徒間での人気投票で決められるのに対し、風紀委員会は完全な実力主義。先輩や後輩、同級生。果ては教師からの推薦等、風紀委員は軒並み腕っぷしが強い者、強そうな者が推薦人に推されて選ばれる。
共に問題は多々あるのだが、それがこれまで選出方法として伝統的に行われてきたことであった。

「…だからって、今更過ぎるだろう」

生徒会長となった恋人、高嶺 泰久と向き合うようにして空き教室の床に座った風紀委員長、友国 宗幸は柄も悪く舌打ちして言う。

「付加価値が付いただけで、目の色変えやがって。面白くねぇ。お前自体は何も変わってねぇのに」

宗幸は憤るように言葉を続けると困ったように笑う泰久を睨み付けた。

「まぁ…お前の言いたいことも分からなくはないけど」

そして、そんな宗幸の頭に、ぽんぽんと宥めるように手を置いたのは誰あろう、宗幸が憤る原因になった泰久である。
宗幸は頭に乗せられた泰久の手を掴むと、止めろと言って頭の上から下ろさせる。

「俺はお前にも言いたいことがある」

「俺?」

「お前は愛想がよすぎる」

相手にしなくてもいい人間にも応えて、それが余計に人を寄せ付ける原因になっていると宗幸はとぼけた反応を見せる泰久を睨み付けて言う。

「そんなこと言われても俺は普通に対応してるだけだし。俺は俺よりお前の方が…」

「俺はお前と違って普段から愛想なんか振り撒いてねぇ。そう見えるなら、それはお前限定だ」

泰久と同じぐらい身長のある宗幸は、僅かに茶色みのかかった髪に、きりりとした鋭い双眸を持つ。泰久と違って、宗幸は他の生徒達からは近寄りがたい者として認識されていた。

「んー……そう言われてみれば。お前、委員長になってから、あんまり表情変わらなくなったか?」

風紀委員長になった宗幸は推薦された生徒達とは別に己の親衛隊からも風紀委員を選出すると、彼らを自分の手足の様に使っていた。その親衛隊の隊員達は宗幸がたまにこぼす笑みを褒美に頑張っていた。
それ故か分からないが、学園内の情報、特に人気を集めている生徒会長の行動ともなれば、真偽はともかくどんなものであろうと風紀委員長である宗幸の耳には届けられていた。

「分かったら、自重しろ。お前はただでさえ誤解されやすいんだ。なのに、生徒会長なんかに選ばれやがって」

「んー、それって…」

やきもちが含まれているのかと、口に出す寸前で泰久は宗幸の顔を見て思い止まる。変わりに別の事を口にした。

「何か変な噂でも聞いたか?」

「俺は生徒会長がどこぞのクラスの人間から告白されてたなんて、一切聞いてねぇ」

「聞いたんだな」

感情任せではなく、先手を打って上手く話を誘導していかなければ、この恋人は中々に厄介で。ストレートに不満を言葉にしてぶつけてくるうちは可愛いのだが、口に出す事もなくさらりとかわされ始めると後が怖い。裏で何かしらの策謀が行われる事があるのだ。その辺りは幼なじみの経験として分かっているつもりだが。

珍しくにっこりと笑みを閃かせてそう言い切った宗幸に、泰久は真摯な眼差しを向けると、その頬を包み込むように両手を添えてストレートに告げる。

「確かにそんな話もあったけど、直ぐに断ったよ。俺にはお前っていう大切な恋人がいるからな」

「……俺がいなかったら付き合うのか?」

「変な所で揚げ足取りに来るなぁ」

どうなんだと、強い眼差しで返答を急かされ泰久はこれも可愛いやきもちかと広い心で受け止めて、口付けと共に答えを返す。

「そんなわけないだろう。俺にはお前だけだよ」

「……まぁ、そうだよな」

ふと嬉しそうに吐息を漏らした宗幸に泰久も誤解が生まれる前に問題が解決して良かったと心を緩ませて笑う。

「泰久」

珍しく宗幸から伸ばされた手を受け入れれば、泰久の首裏に腕が回され、互いに向き合う様に座っていた宗幸が腰を上げる。

「宗幸…?」

大胆にもそのまま泰久の足の上に乗って来た宗幸に驚いて動きを止めれば、絡めた視線の先の瞳がすぅっと妖しげに細められる。弧を描いた唇が泰久の戸惑いを封じる様に額へ落とされ、唇を塞がれた。

「んっ…」

この流れの中で何が宗幸にそうさせたのか泰久には分からなかったが、泰久は宗幸の好きにさせる。口内へと侵入してきた舌を受け入れるように舌先を触れ合わせれば、絡み付く様に舌先が混じり合う。

「ふっ…」

じわりと赤く目元を染めた宗幸の鼻から甘い吐息と一緒に掠れた声が抜けていく。
あまやかなその様をいとおしげに見つめていれば、角度を変え深さを増した口付けに、じんわりと身体が熱を持ち始める。
舌が絡まり、吐息が交わり、口内に溜まった唾液がくちゅりと音を立て、鼓膜を揺らす。

「…ンっ…泰久」

泰久の首の後ろへと回されていた腕に力が込められ、足の上に乗っていた宗幸の身体が泰久へと押し付けられる様にのし掛かってくる。
同時に首から外された宗幸の片手が、口付けにより熱が集まってきていた泰久のスラックスの上に触れてきた。

「っ、……宗幸」

びくっと肩を震わせた泰久が口付けを止めて、宗幸を咎める様にその名を口にした。けれど、宗幸は微笑むだけで、唾液で濡れて熱くなった赤い唇をわざとらしく見せつける様に舌で舐めとる。スラックスの上に添えられた右手がそこをゆっくりと撫で上げてきた。

「宗幸っ、…お前、…」

「いいだろう?」

昼休みはまだたっぷりとある。
双眸を細めて妖しく微笑んだ宗幸は泰久の心を揺さぶる様に普段ならしない事を口に乗せた。

「選ばせてやるよ。手か口か、泰久はどっちが良い?」

「くち…」

その選択に泰久は欲望のままに答えてしまったが、そうではない。

「ちょっと、待て。宗幸!」

見せつける様にスラックスに触れていた右手が泰久のバックルにかけられ、窮屈そうにしていた前を開かれる。

「嫌だね」

躊躇うこと無く取り出された欲の塊に宗幸の指先が絡められ、熱を持って頭をもたげ始めていたそれを上下に抜かれる。

「っ、…ぁ…」

宗幸は変な所で思い切りがいい。
それは幼なじみ兼恋人である自分が一番良く知っていたはずだ。
直接的な刺激な与えられ、思わず声を漏らした泰久に、宗幸は泰久の足の上から下りるとその場で身を屈めた。
その両肩を泰久は慌てて掴み、押し止める。

「お前、本気か?」

「泰久は嫌か?俺にされるの」

「そっ、んなわけないだろう!むしろ、嬉しい…って、そうじゃなくてだな」

「なら、何も問題はねぇな」

きゅっと軽く欲の塊を握れば泰久は若干怯み、宗幸はその隙に泰久の腰元へと顔を近付けた。最初は悪戯混じりに息を吹き掛け、ゆるゆると指先で抜く。じわりと先端から蜜から滲んだ所で、思い切り良く口内へと運んだ。

「っ、宗幸っ……!」

ぬるりと生暖かい口腔に包まれた途端、泰久の腰に何ともいえぬあまやかな震えが走る。ぞくぞくと背を震わせ、宗幸の肩を押さえる為に置かれた手に力がこもった。
カッと上がった体温に頬が紅潮し、どくどくと早まった鼓動に呼吸が荒くなる。

宗幸は泰久の反応に瞳を細めると、口内に収まりきらなかった所を指先で愛撫し、口内へ納めた熱塊に熱い舌を這わせる。
どくどくと自分の鼓動にリンクするように脈打つ熱塊に、たらたらと溢れ出した蜜。宗幸はその出口に向かって舌を這わせ、先端に舌を捩じ込む様にぐりぐりとそこを刺激してやる。

「ばか、やっ…はっ、ぁ…あ…」

顔を顔を背けて、堪らないという様に腹筋を震わせた泰久の様子を下から見上げて、顔を動かす。じゅぷりと口内に収まりきらずに溢れた蜜が宗幸の口回りを汚していく。それでも構わずに、宗幸は泰久御所望の口での愛撫を続けた。

「はっ、…っ、…宗幸」

泰久のものを口内いっぱいに含んだまま、宗幸は頬を紅潮させ、熱で潤んだ目で泰久を見上げる。

「もういい。…もっ、離せ」

これ以上はヤバイと、宗幸の行為によりパンパンに張り詰めた熱塊に泰久は腰が震えそうになるのを抑えながら首を横に振る。
うっかり気を抜いてしまえば、このまま乱暴に宗幸の口内へと放ってしまいそうだと、泰久はぎりぎりの理性を引き絞って言う。しかし、相手は一筋縄ではいかない幼なじみ兼恋人だった。

「そのまま出せよ」

一度泰久のものから唇を離した宗幸は艶やかに微笑むと、ぎりぎりで留まっていた熱塊へと自ら再び口付けた。息を呑んで腰を震わせた泰久のものへと、ねっとりとざらざらした熱い舌を這わせ、決壊寸前の欲望を刺激する様に先端へと吸い付く。

「ふっ、ぅっーー」

次の瞬間、堪えきれずに圧し殺したような低い声と共に熱塊から熱い飛沫が迸る。ぶるぶると大きく震えた熱塊が宗幸の口腔で暴れ、喉の奥までどろどろに犯していく。がくがくと顔を上下に揺さぶられ、宗幸は口腔へと放れたどろりとした液体を何とか嚥下する。ふぅふぅと息を荒くして、額に汗を浮かべて雄そのものの顔を見せた泰久の表情を盗み見て、宗幸は満足そうに口端を緩めた。

「ん。…俺もお前が好きだぜ、泰久」

生徒会長と持て囃されている恋人の、理性を剥ぎ取った顔。いつもは理性に阻まれて見ることが出来ない、恋人である宗幸だけが見れる顔。宗幸はそんな泰久の顔も大好きだった。

「だから、他の誰にもやらねぇ」

口許に付いた液体を拭いつつ、宗幸は熱くなった身体を泰久へと寄せる。

「なぁ、泰久…」

「っ悪い、宗幸!大丈夫か?」

やがて呼吸の整った泰久が我に返って、慌てて宗幸の上体を起こさせた。
だが、余韻に浸っていた宗幸は泰久の慌て振りと謝罪の言葉にきょとりと首を傾げただけだった。

「何を謝ってるんだ?」

「その…口に出しちまって。それにお前が怒ってる事にも気付かなくて」

「別に俺は怒ってねぇし、俺が良いって言ったんだ」

「じゃぁ、今のは…」

何だったんだと、サービスが良いなと泰久はいつになく積極的に仕掛けてきた宗幸に翻弄されつつその真意を探る。
すると宗幸はうーんと首を傾げた後、強いて言うならと本音を溢した。

「俺が欲求不満なんだ。ここ最近、お前は生徒会の仕事だとかで会う時間も減ったし、その足りない分を内容で補ったってバチは当たらねぇだろ」

「だからって、お前な…」

やることが強烈過ぎると泰久は身嗜みを整えることもせず、熱の残る溜め息を吐く。

「どうだ?忘れられない時間になっただろう?」

そんな泰久の様子を面白がる様に見つめて、宗幸はにやりと笑う。

「あぁ……本当、お前って奴は…」

「泰久?」

いくら幼なじみで、恋人とは言え、口にしなければ伝わらないこともある。どちらかと言えば行動派の恋人から零れ落ちた小さな不安の欠片を拾い上げて、泰久は言葉と行動で宗幸の心を包む。

「忙しかったからは言い訳にはしない。不安にさせて悪かった、宗幸」

泰久は宗幸の肩を引き寄せると腕の中に抱き締めて、その頬に口付け、唇を塞ぐ。

「んっ…」

泰久?と戸惑った表情を浮かべる宗幸の口内を優しく愛撫し、舌を絡める。独特の臭いと苦みの残る口内に僅かに眉をしかめ、角度を変え、唾液を交わらせる。歯列をなぞり、ゆるりと緩んだ宗幸の眼差しに、もう片方の手で宗幸のバックルに触れた。

「宗幸」

息継ぎの合間に名前を呼んで、囁く。

「周りがどれだけ騒ごうと、俺の恋人はお前だけで。欲しいと思うのもお前だけだよ」

目元を朱に染めた宗幸の双眸が見開かれる。唇を甘噛みして、しっかりと伝わるようにその目を見つめて言う。

「…好きだよ、宗幸」

言葉を紡ごうとした宗幸の唇を再び塞いで、バックルを外す。泰久と同じく熱を宿していたそれを下着の中から引きずり出して、泰久は仄かに熱を取り戻していた自身のものと共に合わせてゆるゆると絡めた指を動かす。
びくりと身体を震わせた宗幸の身体をゆっくりと床に押し倒し、唇を離す。

「あ…っ、泰久…!」

離れた唇同士を透明な糸が繋ぎ、瞳を潤ませた宗幸の手が泰久の腕を掴む。
制止の声が発される前に泰久は宗幸の首筋へ顔を埋めて、熱を持った肌に唇を寄せた。

「今すぐにでも…お前の中に入りたいぐらい」

分かるだろと、一纏めに扱われる熱の塊に、じわじわと甘い誘惑が腰を震わせる。とろり、とろりと先端から零れ出した蜜が泰久の指先を濡らし、ぐちゅぐちゅと耳を打つ水音が互いの状態をまざまざと伝えてくる。

「っ……!」

じくりと肌を吸われて、独占欲の強さを知らしめるかのように赤い華が咲いていく。
身体を震わせた宗幸の手が、泰久の求めに応じるように腕から背中へと移動する。

「俺も……お前が欲しい。…泰久」

入れてくれと、熱っぽい声音を漏らして、宗幸が腰を持ち上げる。そもまま下着ごとスラックスを下げられ、前の熱に絡んでいた泰久の手がその奥にひっそりと存在するすぼまりへと向かう。
先走りで濡れた熱い指先が奥地へと突き入れられる。

「うっ…」

「悪い。余裕がない」

さんざん宗幸に煽られたせいか、目元を赤くさせ、僅かに息を弾ませた泰久が短く謝罪する。
手を離されても尚、昂ったままの熱に宗幸は僅かに笑みを溢す。

「いいっ、…それより、興奮する」

余裕のない泰久を見るのも好きだから、と宗幸は泰久に抱き着いたまま、耳元で囁く。

「っ、ばか野郎…」

こっちは優しくしてやりたいのにと、二本目の指を無理のない範囲で中へと沈み込ませ、ぐるりと内壁を押し広げる。ぐねりと蠢いた内壁を傷付けないように指を動かし、刺激を与えていく。
その内に緩みをみせ始めた壁に中に入れる指の本数を増やし、僅かに感触の変わるそこを指の腹で擦ってやる。

「ぁ、うッ…、ァ…あ…!」

ぶるりと身体を震わせ、甘い声を上げた宗幸に泰久はそこを重点的に刺激してやる。

「は、っ…や…ひさ…ッ」

そこは堪らないのだと、ふるりと頭を一度横に振って訴えてきた宗幸に泰久は分かっていると、宗幸の額に口付けを送って行為を先へと進める。
秘所へと潜り込ませた指を引き抜き、ひとりでに上向いて立つ宗幸のものへ右手を絡めた。

「宗幸」

そして、もう片方の手で堪えきれずにたらたらと蜜を溢す己の切っ先に触れ、暴いた宗幸の身体の奥地へとその狙いを定める。

「はっ…は…、泰久…」

どくどくと脈打つ熱い鼓動そのものの塊が宗幸の秘孔に押し当てられ、それを受け入れる為に宗幸は呼吸を整える。その健気な様子に泰久は再び宗幸に口付けを送ると、愛おしげに微笑んだ。

「宗幸。好きだよ」

「…ん。俺も」

ふわりと心から溢された笑みに、ギリギリで保たれていた泰久の理性が擦りきれる。
秘孔に押し当てられていた切っ先が、本能の向くままにズンッと一息に奥まで突き入れられた。

「ひ、ぁッ…!ぁあ、…っ…ァ…あ…」

その衝撃に宗幸は一瞬息を詰め、目の前にあった泰久の肩を噛む。

「っ、悪い。…止めらんない」

熱く絡み付く内壁に、ぎゅっとキツく絞められる感覚に泰久は腰を震わせ、その感触を味わうようにずるりと腰を引く。

「ぁ…、ぅ…ン…」

ふるふると首を横に振り、宗幸もまた続きを求める。
泰久の手に片手を重ねて、自らの熱を抜く。

「あぁ、こっちが留守だったな」

泰久は再び腰を深く突き動かし、その度にとぷりと蜜を溢す宗幸のものを指先で可愛がる。とろとろと蜜で濡れる先端を親指の腹で虐め、絡めた指先を上下させる。じゅくじゅくと立つ水音と腰を打ち付ける乾いた音が教室の中に響く。

「ぁあ…っ、あ…ふ…ンっ、…ん…」

がつがつと打ち付けられる腰に、下半身の感覚が曖昧になってくる。下腹部に感じる灼熱に、宗幸の思考は溶けていく。

「は…ァ……、やす…ひさ」

熱に浮かされ潤んだ瞳で泰久を見上げれば、額に汗を滲ませた泰久が欲を孕んだ目で宗幸を見下ろしてくる。どうしたと問う視線に、宗幸は声がと返す。
間もなく落ちてきた唇に唇を塞がれ、舌を絡ませ合う。上も下もどろどろに熱く混じり合い、その気持ち良さに瞳を細める。やがて、ずくりと腰に走った一際甘い痺れに、互いに限界が近いことを知る。

「…んっ、…はっ、ン…ッ…!」

宗幸のものも泰久の手の中でもう痛いぐらいに張り詰めていて、身体の中の熱が出口を求めてぐるぐると渦巻く。下腹部に埋め込まれた泰久のものも宗幸の秘孔の中でみっちりと隙間なく体積を増やして、ずしりと奥を突いてくる感覚が短くなっていた。

「っ、…宗幸、…も…っ、やばい…」

「ぅンっ、…おれ…ッ…も……いきそ…」

「…中に、出したい。…出してもいいか?」

「俺は…っ、は…ァ…最初から…その、つもりで…ッ」

昼休憩中に誘ったのは宗幸で、かといって始めからゴムなど何も準備はしていない。
だから、中に出されようと始めから文句など言うつもりもなく。むしろ、それが狙いかのように宗幸は艶やかに微笑んで泰久を煽った。

「ふ…、っ、あとで、ちゃんと…処理してくれよ…」

「…!…まったく、お前は…」

とんだ恋人だ。処理だけで済むわけがないと、分かっているくせに。
大胆な誘い方に、煽りが過ぎるだろう。
ちらりと策士な面を覗かせる恋人に、泰久は翻弄されるばかりで。でも、そんなところも好きでしょうがない。

「可愛すぎだろう」

ここまでしてくれた恋人の期待には応えてやらねばなるまい。秘孔いっぱいに埋めていた己の熱を秘孔の入口ぎりぎりまで引き抜く。

「ン…っ…ぁ、…や、ぁあ……ッ!」

そして、僅かに腰を跳ねさせた宗幸の腰を片手で押さえると、もう片方の手でぶるぶると限界を訴えて震える宗幸のものをぐっと握った。

「あっ、…ばか…っ…ぁ、なん…手…はな……っ」

「足りない分は中身で補うんだろう?…これ、前に気持ち良すぎてやばいって言ってたもんな?」

突然熱の放出口を塞き止められ、告げられた台詞に宗幸が身体を戦かせる。目を見開いて抗議するも先に、意地悪気に熱っぽい笑みを閃かせた泰久の行動の方が早かった。

「いっ、…ッ、ぁ、あ…ぁあァ!」

奥の奥まで貫くように勢いをつけて灼熱の塊が突き入れられる。同時にどろりと体内へと放たれた熱を感じて、宗幸は言葉にならぬ声で啼いて腰を震わせる。

「くっ…、は…っ…しぼりとられる…」

奥を突くと同時にキツく締め付けられ、泰久は眉をしかめるとそのまま強引に抜き差しを繰り返した。

「あっ、あぁ…、ァ…、あぁ…!やす、っ…ッ!」

ぐちぐちと泰久の注いだ熱が下半身を汚し、それでもまだ解放されていない熱に宗幸のまなじりから涙が零れる。ぐるぐると体内へと逆流してくる熱に宗幸は濡れた瞳を泰久に向ける。完全に逆転した主導権に泰久は優しく微笑み、戒めていた宗幸の熱を握る手を緩める。

「ん。…次は一緒にいこうな」

「え、あっ、…あァ…っ…!」

中で再び硬さを取り戻した熱に、がくがくと宗幸の身体が揺さぶられる。ぐるぐると宗幸の中で渦巻いていた熱はぽっかりと開かれた出口に向かって一直線に駆け上がる。ぶしゅっと吹き出した熱は泰久の制服を汚してなお、だらだらと止まることなく続く。

「ンぁ、あぁ…っ…、きもち…い…、とまんねぇ」

泰久の手に腰を擦り付けるように長く続く解放感に浮かされて呟けば、泰久はだろう?と恋人の痴態に熱を上げて、解放感に浸る宗幸の意識を自分へと引き戻す。

「もっと善くしてやる」

宗幸がいってる最中にも関わらず、泰久は腰を休めることなくぐねぐねと蠢く内壁を刺激するように動かす。

「い…や、…泰久!まって…!…俺、…まだッ」

いってるのに、と外と内からの攻めに宗幸は泰久の下で身悶える。身体を侵食する熱に甘く濡れた声音が零れる。

「分かってる。だから、そのまま俺といこうな」

近付けられた唇に耳朶を噛まれ、流し込まれた欲を隠さぬ荒い息にぶわりと宗幸の体温が上がる。ぞくぞくとした震えが背筋を走り抜け、たらたらと落ちる量の少なくなった先端からぷしゅっと少量の熱が弾ける。

「〜〜っ、泰久!」

「ほら、いけるだろう?」

ぬちゃぬちゃと宗幸のものにからめられた指先が音を立て、中と外を攻める手が早まる。

「ばかあっ……ぁ…ッ、ぁあ…!」

狙うように良いところばかりを突かれ、宗幸の口からはひっきりなしに嬌声が上がる。

「はっ、…お前が良いと、俺も気持ちいい」

でも、声は抑えようなと唇を塞がれる。
ぐちゃぐちゃに混ざり合う水音が下からのものなのか、上からのものなのか、どちらのものか分からぬまま、二人は求めて交じり合う。
互いに解放に向けて昂りをぶつけ合い、やがてその時がくる。

「っ、…も……ぃ、いく!…いく、…やすッ」

宗幸のものに絡められていた泰久の手に宗幸は手を重ね、その上から最後の一押しを催促する。息を弾ませていた泰久も喉を鳴らし、瞳を細めた。

「あぁ…俺も…っ…」

熱い息を吐き出し、泰久は一際強く腰を前後させると、やや乱暴に宗幸のものを擦り上げた。

「いくっ」

「や、っ、ぁあっ…!」

たらたらとひっきりなしに蜜を溢していた先端がどくりと強く脈打った瞬間、どぷりと熱い飛沫を飛ばす。

「あ…、ぁ…、出てる…、俺の中に…ッ…」

己の熱を解放すると同時に体内で弾けた灼熱がしとどに秘孔を濡らす。はくはくと呼吸を繰り返す宗幸は身体を震わせ、中に感じる泰久の力強い拍動に、その熱さに浮かされたようにうっとりと瞳を細めて言葉を溢す。

「…ひさ…、泰久…」

息を乱して、紅潮した顔を持ち上げ、キスをせがんできた宗幸に泰久は優しい口付けを送る。
ふわふわと甘やかすように唇を降らせ、ゆるゆると腰を動かしてゆっくりと宗幸の秘孔から己を引き抜いた。

「はぁ……は…ぁ、あ…、ン……っ」

どろりと一緒に秘孔から零れ落ちた蜜を目に、再び上がりそうになった身体の熱を何とか抑え泰久が口を開く。

「…宗幸。……移動しよう」

「ぁ…ン……ん…、ん…?…なんで、泰久?」

「これ以上はお前が目の毒過ぎる…」

止めるにしても、続けるにしても。さっさと場所を移したい。それが本音だ。
泰久は偽らざる本音でもって、宗幸へそう告げる。

「んー……じゃぁ、とりあえず。運んでくれ。なるべく人目につかないように」

これまた珍しく両手を持ち上げて万歳の形を取り、その身を委ねてくる宗幸に泰久は何かに気付いて気まずい表情を浮かべた。

「あぁ。お前のせいで腰が立ちそうにねぇ」

にこりと綺麗に笑った顔が、抜かずに二度も放たれるとは思わなかったと言う。確かに泰久も調子に乗った自覚はあった。むしろ恋人に誘われて、我慢できる男がいるか。僅かにたじろいだ泰久に宗幸は柔らかく微笑む。

「怒ってねぇよ。俺が誘ったんだし。ただ…」

途中で言葉を途切れさせた宗幸はたらりと太股を伝って中から落ちてきた、泰久が放った熱に指先を絡ませ小首を傾げた。

「これ、移動の間、どうすれば良いと思う?」

そこまで考えてなかったと、宗幸は気の抜けた表情で言う。泰久から見たらその様は無防備ですらあった。

「とりあえず、それに触るな。手を拭け」

ぬるぬるしてると指先に絡めた蜜を弄ぶ宗幸に、泰久は一部が汚れた制服の上着を脱ぐとそれで手を拭くようにと上着を宗幸に差し出す。ざっと自分の身なりを整え、手を拭く宗幸の全身をさっと見て、己のスラックスのポケットを探った。

「宗幸。嫌かも知れないが、ちょっとだけ我慢してくれ」

泰久はポケットからよれよれになった制服とセットになっているネクタイを取り出すと、それを丸めて宗幸の足元にかがみこむ。

「泰久」

「後でちゃんと綺麗にしてやるから」

な、と太股に唇を寄せ、泰久は丸めたネクタイを宗幸の秘孔に押し込む。

「っ、あ…」

「我慢してくれ」

「ごわごわして、変な…感じがする」

「ん。…これで、大丈夫そうか?」

下着を戻し、スラックスを履かせる。
何とか見た目は平気になったが、宗幸の視線が落ち着かなさげに揺れる。

「大丈夫か、宗幸?」

「異物感が半端ねぇ…」

泰久は床に散っていた汚れを上着で拭うと、その上着を丸めて宗幸に持たせる。そして、両手を開けた泰久は宗幸の身体を慎重に横抱きに持ち上げると、移動を開始した。

「んっ…」

幸いなことに、昼休憩は終わっていたのか、廊下に他の生徒達の姿は見えない。もっとも生徒会室や風紀委員室から遠いこの空き教室には、普段から生徒達は近寄らない。教師も使用することのないこの教室は何の為の部屋なのかということだが、二人が逢瀬に使うのに便利なのでそのままにしていた。

「は…ッ…」

「どうした?お腹、痛いか?」

腕の中で身動ぎ、時折掠れた吐息を漏らす宗幸に泰久の心配そうな眼差しが向けられる。しかし、宗幸はそうじゃないと泰久の首に回した両腕で顔を近付け、囁くように言う。

「なか、…擦れて、妙な気分になる」

「ーーそうか」

「…はやく、出したい」

泰久と、首元で熱混じりの吐息を吐き出され、一瞬泰久の足が止まりかける。
宗幸はそんな状態から意識をそらしたいのか、泰久の肩口に頭を擦り付けてくる。

なんなんだ、これは。
今日はやたらと恋人が可愛すぎる。
まぁ、幼なじみの宗幸がめちゃくちゃ可愛いのは昔からだが。その可愛さに今は色艶が混じって、危うい色気を感じる。

「本当は…俺よりお前の方が危ないんじゃないのか?」

「ン…なに?……はやく、泰久」

はっ、そうだ。今は余計な事に気を散らしている場合ではない。とにもかくにも早く寮へと行こうと、泰久の足が速さを増したのは言うまでもない。
そしてまた、寮へと向かった二人がその後どうしたのかは二人だけしか知らない。

風紀委員長、友国 宗幸は生徒会長と並ぶ権力を与えられた風紀委員長である。その腕っぷしの強さはさることながら、宗幸はあまり表情を変えないことで、時に冷やかに見える鋭い眼差しで周囲からは近寄りがたいと思われていた。しかし、そんな周囲の評判を気にすることなく生徒会長、高嶺 泰久だけは彼を可愛いと言って憚らなかった。


end.



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